定期報告制度とは?

定期報告制度は、建築基準法第12条に基づき、建物や設備の安全性を確保するために設けられた仕組みです。
外壁の劣化や設備の不具合などは、日常的な目視点検だけでは気づきにくい場合があります。そこで、建築士や専門資格者が定期的に調査・検査を行い、その結果を行政へ報告することを義務付けています。

定期報告制度って義務なの?それとも任意なの?

建築物のオーナーや管理者の方からよく聞かれるのが、
「定期報告ってやらなくてもいいんですか?」という質問です。

結論から言うと―― 定期報告は義務です。
建築基準法第12条で、一定の建築物や建築設備について、所有者や管理者が定期的に調査・検査を行い、その結果を所管の行政庁に報告することが求められています。

なぜ義務化されているのか?

定期報告が義務とされているのは、利用者の安全を守るためです。

劇場、百貨店、病院、学校、ホテルなど、不特定多数の人が利用する建物は、事故が起きると大きな被害につながります。

実際に、外壁タイルの落下や避難設備の不備などにより、過去には重大な事故が発生しています。こうした事故を未然に防ぐために、定期報告制度が設けられているのです。

対象となる建物・設備は?

定期報告が必要となるのは、主に以下のような建物や設備です。

〇 劇場、映画館、百貨店、ホテル、病院、学校などの不特定多数が利用する建築物
〇 高層建築物や特殊建築物
〇 建築設備(換気設備、非常用照明、給排水設備など)

対象となる建築物の種類や規模は、各自治体によって基準が異なる場合があるようですね。

報告の頻度は?

定期報告は建物の種類や用途に応じて、毎年または3年ごと に実施することが定められています。

たとえば、大規模な劇場や百貨店は毎年、学校や病院などは3年ごと、といった具合です。

ちなみに埼玉県の対象建築物の報告間隔は以下のようになっています。

用途報告間隔
劇場、映画館、演芸場2年
集会場、公会堂、観覧場2年
病院・診療所(患者収容施設あり)2年
ホテル・旅館、就寝用途の児童福祉施設等2年
共同住宅(一般)3年
共同住宅(サービス付き高齢者向け)など2年
学校(小・中・高・大学以外)、体育館2年
博物館、美術館、図書館、スポーツ施設など3年
大型店舗(物品販売業)2年
飲食店、遊技場など2年
事務所など類似用途3年

※報告間隔の年数は、規模や条件で異なる場合があります。詳細は、埼玉県の「定期報告対象建築物一覧表(調査表)」を参照してください。

もし報告を怠った場合のリスクは?

「忙しいから…」「今回は見送ろう」といった理由で報告を怠ると、以下のリスクがあります。

〇 行政からの指導・勧告・命令を受ける可能性がある。
〇 重大事故発生時に所有者・管理者が責任を問われる。
〇 建物の資産価値の低下や、取引上の不利益になる。

万一事故が発生した場合、所有者や管理者が法的責任を問われることもあるのですね。

つまり、定期報告は「やるかやらないか自由」ではなく、建物を安全に使い続けるための法的な義務なのですね。

まとめ

定期報告は 任意ではなく義務

建築基準法第12条に基づき、対象建物・設備の所有者や管理者が行う。

調査は専門資格者が実施し、所管行政庁に報告する。

報告を怠れば、行政指導や法的責任に発展する可能性がある。

建物は時間の経過とともに必ず劣化します。
安全で安心できる建物を維持するためにも、定期報告は「コスト」ではなく「建物の健康診断」と考えることが大切です。

タイトルとURLをコピーしました